制度の行間 #02

上位の「ロ区分」は取るべきか? 生産性向上要件とICTのリアル

連載「制度の行間」第2回
この記事は、こども家庭庁・厚生労働省が公表した一次資料をもとに、障害福祉サービス事業所の経営者・管理者・実務担当者向けに、令和8年6月施行の処遇改善加算の「ロ区分」を整理したものです。制度の一般的な解説であり、公式見解そのものや個別の算定アドバイスではありません。具体的な算定・届出は必ず後掲の一次資料と所管自治体の案内をご確認ください。

第1回では、令和8年6月の処遇改善加算の改正点を4つに整理しました。今回はそのうちの一つ、「上位のロ区分が新設された」という話を、もう一段深く掘り下げます。

結論から言うと、ロ区分は「加算率が高い、おいしい区分」です。でも、おいしいものにはたいてい準備がいります。取りに行くべきかどうかを、冷静に考えるための材料を並べます。

「イ」と「ロ」――同じ加算Ⅰ・Ⅱでも、上下がある

今回の改正で、加算の区分は Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳ に整理されました。

ポイントは、加算Ⅰと加算Ⅱが、それぞれ「イ」と「ロ」の2段階に分かれたことです。Ⅲ・Ⅳは従来どおり。そして「ロ」のほうが「イ」より加算率が高い、上位区分です。

つまり、これまで加算Ⅰを取っていた事業所から見ると、「Ⅰイ」にとどまるか、ひと頑張りして「Ⅰロ」を取りに行くか、という選択が新しく生まれた、ということになります。

ロ区分を取るための要件

では、上位の「ロ」を取るには何が必要か。一次資料や各所の解説を整理すると、おおむね次のような要件が示されています(サービス類型によって細部が異なるため、必ず一次資料でご確認ください)。

ざっくり言えば、「生産性向上に本気で取り組み、その成果を毎月の給与に回している事業所」を、加算率の上乗せで後押しする――という設計です。

令和8年度は「誓約」で間に合う。でも、誓約は約束です

ここで、実務担当者にとって大きいのが令和8年度の緩和措置です。

本来必須となるキャリアパス要件や職場環境等要件などについて、令和8年度は「年度末までに対応する」と誓約するだけで、ロ区分の算定をスタートできるとされています。準備が完全に整っていなくても、走り出しながら整えられる、という趣旨です。

ただし、誓約は「やります」という約束です。年度末には実績の報告が必要になります。「とりあえず誓約して取ったが、結局できなかった」となると、後で返還を求められるリスクがあります。誓約で始めるなら、「本当に年度内にやり切れるか」を見てから、というのが安全です。

「生産性向上の取り組み」って、結局なにをすればいい?

要件に出てくる「生産性向上」。言葉は固いですが、中身は地に足のついたものです。たとえば次のような取り組みが挙げられています。

要は、「人がやらなくていい作業を、道具に肩代わりさせて、空いた時間を支援に回す」ということです。

紙とFAXと口頭で回している事業所は、どこから手をつける?

正直に言えば、ロ区分はすでにある程度デジタル化が進んでいる事業所ほど取りやすい構造になっています。紙とFAXと口頭伝達で回している事業所にとっては、要件のハードルが高く感じられるはずです。

それでも着手するなら、現実的な順番はこうだと考えます。

  1. 記録のデジタル化:手書き・Excel転記をやめ、支援記録をソフトで一元化する。いちばん効果を実感しやすい入口
  2. 情報共有の効率化:申し送りノートや電話・FAXを、ビジネスチャットやインカムに置き換える
  3. 請求の転記削減:記録から請求データへ自動で連携させ、二重入力をなくす

この順で進めると、「気づいたら生産性向上の取り組みがいくつも実施済みだった」という状態に近づきます。

結論:「取れるか」ではなく「取る意味があるか」

最後に、いちばん大事なことを。

ロ区分は、加算率が高い。だから「取れるなら取りたい」と思うのは自然です。でも、ロ区分には社会福祉連携推進法人への所属や、ICT投資、配分設計の見直しといった、それなりの体制づくりが伴います。

小規模で、当面そこまでの体制を組む予定がない事業所が、加算率だけを見て無理に取りに行くと、要件対応に振り回されて、かえって現場が疲弊することもあります。

だから判断の軸は、「取れるか」ではなく「自所の体制と、これからの方向性に見合うか(=取る意味があるか)」。そこを冷静に見極めることが、今回の上位区分とのいちばん健全な付き合い方だと思います。

一次情報・出典

正確な要件・加算率・様式・配分割合は、必ず以下の一次資料と所管自治体の案内をご確認ください。本記事中の要件は解説のための整理であり、最終的な判断は一次資料に基づいて行ってください。

【筆者について】「福祉参謀室」室長のりくです。ふだんは障害福祉サービス事業所の会計・経理・財務まわりの仕事をしている実務者です。税理士等の資格者ではないため、個別の税務・請求のご相談には応じられません。

この記事は制度の一般的な解説であり、個別の税務・労務・報酬請求に関する助言ではありません。具体的な判断は一次情報および所管自治体・専門家にご確認ください。

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