第1回の最後で、「処遇改善加算だけ見ていると全体像を見誤る」と書きました。今回の期中改定では、処遇改善加算と同時に、就労継続支援B型の基本報酬区分にも手が入っています。B型を運営しているなら、こちらのほうが収入に直接響くかもしれません。
なぜ今、B型の基本報酬が見直されたのか――発端は「ものさし」の変更
話は令和6年度(2024年度)の報酬改定にさかのぼります。
B型の基本報酬は、多くの事業所で「平均工賃月額」が高いほど高い区分になる仕組みです。その平均工賃月額の計算方法(ものさし)が、令和6年度に変更されました。
新しい計算式では、分母の取り方が変わった結果、平均工賃月額が約6,000円上昇しました(改定事項資料に明記)。実際の支払い額が増えたというより、「同じ実態でも、数字が上がって見える」ものさしに変わった、というイメージに近いものでした。
その結果どうなったか。想定以上に高い報酬区分に該当する事業所が増えてしまったのです。これは制度全体で見ると、見込んでいた以上に報酬が出ていく、ということでもあります。
令和8年6月、なにが変わるのか
そこで令和8年6月の期中改定で、B型の基本報酬区分が見直されました。一次資料(改定事項の資料と、令和8年3月31日付のQ&A)によれば、ポイントは次のとおりです。
- 区分の基準となる平均工賃月額を、それぞれ3,000円引き上げる(=同じ工賃額でも、これまでより一つ下の区分になりやすくなる)。引き上げ幅は、算定方式の変更による上昇幅・約6,000円の「半分」にとどめられています
- 従来の区分の間に「中間的な区分」(A〜Fの6区分)を新設。区分が下がる事業所の基本報酬の減少が3%程度に収まるように設計されています
- 平均工賃月額15,000円未満の区分(区分七・八)は変更なし。この区分の事業所は、区分変更の届出も不要とされています(Q&A問30)
- 令和6年度の算定方式変更の前後で区分が上がっていない事業所は、今回の見直しの適用対象外(従前の区分が継続)
ざっくり言えば、令和6年度に「上がって見えるようになった」分を、区分の基準を引き上げることで調整しつつ、急激な激変は中間区分でやわらげる――という構図です。
施行は令和8年6月1日。区分見直しに係る届出は「令和8年6月中に行うことを基本とする」とされています(Q&A問30)。ただし自治体によっては、令和8年4月に「4・5月分」と「6月以降分」の届出書を同時に提出させる運用も認められていたため、実際の締切・取り扱いは所管自治体の案内によります。もし届出がまだお済みでない場合は、至急、所管自治体にご確認ください。
新しく始める事業所には、別の調整も
もう一つ、これからB型を始める事業所には注意点があります。
令和8年6月1日以降に新しく指定を受ける事業所には、次の定期改定(令和9年度報酬改定)までの間、所定単位数の「1000分の984」が原則として適用されます(告示の注に明記)。つまり、新規事業所は報酬がやや抑えられた形でのスタートになる、ということです。
ただし例外もあります。離島・中山間地域(特別地域加算の対象地域)の事業所や、自治体が地域に特に必要と認めた事業所などは対象外です。また、合併・分割・事業譲渡などで実質的に事業が継続している場合は、既存事業所として扱われます(Q&A)。
これは前例の少ない調整で、これから開業を考えている方には、事業計画に直接影響します。開業のタイミングや収支の見立てを、この点も踏まえて確認しておく必要があります。
「処遇改善加算だけ見ていると、足をすくわれる」
ここで第1回の話につながります。
処遇改善加算は「賃上げの原資が増える」プラスの改正でした。一方、B型の基本報酬区分の見直しは、事業所によっては「区分が下がって基本報酬が減る」マイナスに働く可能性があります。
加算で増える分と、基本報酬で変わる分。両方を合わせて、自所の収入が結局どう動くのかを見ないと、判断を誤ります。 「処遇改善加算が手厚くなった」という話だけを見て安心していると、足元の基本報酬が変わっていた、ということになりかねません。
いま確認しておきたいこと
B型を運営しているなら、まず次の点を確認することをおすすめします。
- 自所の平均工賃月額が、新しい区分でどこに当たるか。区分が下がる見込みなら、基本報酬への影響額を試算しておく
- 届出が済んでいるか(6月中が基本。未了なら至急、所管自治体へ)
- 処遇改善加算の改正分と合わせた、収入全体の見通し
数字の確認は手間ですが、ここを押さえておくと、年度の途中で「思っていたより入ってこない」という事態を避けられます。
一次情報・出典
正確な区分・金額・単位数・届出期限は、必ず以下の一次資料と所管自治体の案内をご確認ください。本記事の数値は以下の一次資料と照合済みですが、最終的な判断は一次資料に基づいて行ってください。
- 「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(PDF・B型はp.8以降)
https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf - 「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」(令和8年3月31日・PDF・届出は問30)
https://www.mhlw.go.jp/content/001683290.pdf - 同Q&A別添資料「就労継続支援B型の基本報酬区分の基準の見直しについて」(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/001683311.pdf - こども家庭庁・厚生労働省告示第5号(令和8年3月31日・報酬算定基準の改正告示・PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/001684450.pdf - こども家庭庁「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について」
https://www.cfa.go.jp/policies/shougaijishien/shisaku/r8hoshukaitei - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00013.html - 就労継続支援B型の届出の締切・様式は、所管する都道府県・市町村の案内もあわせてご確認ください。
この記事は制度の一般的な解説であり、個別の税務・労務・報酬請求に関する助言ではありません。具体的な判断は一次情報および所管自治体・専門家にご確認ください。
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