第1回で「変更点③:相談支援への処遇改善加算の新設」に触れました。今回はその深掘りです。
長いあいだ処遇改善加算の対象外だった計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)に、令和8年6月から処遇改善加算が新設されました。そして、この加算でいちばん間違えやすいのは要件でも計算でもなく、届出先です。
なぜ相談支援は、ずっと対象外だったのか
処遇改善加算の対象は、制度上「福祉・介護職員」——ホームヘルパーや生活支援員といった、直接処遇の職種を想定した設計でした。相談支援専門員は対象サービスの一覧にそもそも入っていなかったのです。
一方で、報酬改定検討チームの資料は、相談支援専門員などの専門職の平均給与も全産業平均との差があり、人材不足の一因になっていると指摘しています。そこで「現場で働く幅広い職種の賃上げ」という政府方針を受け、令和9年度の定期改定を待たずに、期中改定での対象化に踏み切った——というのが経緯です(令和8年5月分までは、補正予算による緊急支援事業が先行してつなぎ役を務めていました)。
新設された加算の中身
一次資料で確認できるポイントは次のとおりです。
- 名称は既存サービスと同じ「福祉・介護職員等処遇改善加算」。ただし相談支援分にはⅠ〜Ⅳのような区分はなく、単一区分
- 加算率は一律5.1%(所定単位数の1000分の51)。処遇改善加算を除く加減算後の総報酬単位数に乗じます
- 算定できるのは令和8年6月分から(4月・5月分は対象外)
- 賃金改善の配分は柔軟で、対象職種の例に相談支援専門員・主任相談支援専門員が明記されています。職員が1人で、計画作成業務を役員が担っている事業所でも、業務実態があれば加算を算定し、その役員を賃金改善の対象にできるとされています(Q&A)
要件は「2つの入口」のどちらかで
算定要件は、次のいずれかを満たすことです。
- 令和8年度の特例要件:職場環境等要件のうち「生産性向上のための業務改善の取組」を5つ以上実施する(課題の見える化、業務支援ソフト等の導入の2つは必須)。または、社会福祉連携推進法人に所属していること
- 処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件:キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備)+キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)+職場環境等要件のすべてを満たすこと
そして令和8年度は「誓約」の配慮措置があります。計画書の提出時点で要件が整っていなくても、令和9年3月末までに対応することを誓約すれば、満たしているものとして扱われます。ただし誓約した取り組みは年度内に実施し、実績報告書で報告する必要があります。「誓約して算定を始めた事業所」は、年度後半にこの宿題が残っていることを忘れないでください。
最大の落とし穴——届出先は「いつもの県」ではないかもしれない
ここが本題です。
処遇改善計画書や体制の届出は、指定権者(その事業の指定を行った自治体)に提出します。そして相談支援は、サービスによって指定権者が違います。
- 計画相談支援・障害児相談支援 → 指定権者は市町村。計画書の提出先も市町村
- 地域相談支援(地域移行・地域定着) → 都道府県等
通常の障害福祉サービス(就労支援や生活介護など)の処遇改善計画書は都道府県や政令市・中核市に出すため、「処遇改善の書類はいつもの県の窓口へ」という感覚が染みついている法人ほど危ない。実際、千葉県は案内ページで「計画相談支援及び障害児相談支援は、指定権者である各市町村が計画書の提出先となります。県の受付フォームからは提出できません」とわざわざ明記しています。
複数サービスを運営する法人は計画書を一括で作成できますが、その場合も提出はサービスごとの指定権者へそれぞれ行います。「県に出したから終わり」にすると、市町村分が未提出のまま——という手戻りが起きます。
期限は過ぎている。でも、あきらめる話ではない
令和8年6月分から算定する場合の計画書の提出期限は、相談支援の加算新設事業所のみの法人については令和8年6月15日とされていました(既存サービスと同時に算定する法人は原則令和8年4月15日)。この記事の公開時点で、どちらも過ぎています。
ただし、これは「もう取れない」という意味ではありません。原則ルールでは、年度途中でも「初めて算定する月の前々月の末日まで」に計画書を提出すれば、そこから算定を始められます。6月に間に合わなかった事業所も、今から準備して途中の月から算定を開始する道があります。期限・様式・提出方法は自治体ごとに運用差があるので、まずは指定権者の窓口に確認してください。
いま確認しておきたいこと
- 自所の各サービスの指定権者はどこか(計画相談・障害児相談=市町村、地域相談支援=都道府県等)。提出先をサービスごとに書き出す
- 計画書・体制届の提出状況。未提出なら、途中月からの算定開始について指定権者に確認
- 「誓約」で算定を始めた場合の宿題(令和9年3月末までの対応と実績報告)を年間スケジュールに入れる
5.1%は、相談支援の報酬規模でも決して小さくありません。せっかく対象になった加算です。届出先の確認という地味な一歩から、確実に取りにいきましょう。
一次情報・出典
正確な要件・加算率・期限は、必ず以下の一次資料と指定権者(自治体)の案内をご確認ください。国の通知・Q&Aは執筆時点で国のページに未掲載のため、自治体(青森県)掲載の全文PDFを参照しています。Q&Aは「随時更新」とされているため、最新版もあわせてご確認ください。
- 「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(PDF・相談支援への新設はp.2〜3)
https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf - 「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和8年3月31日通知・青森県掲載の全文PDF)
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/syofuku/files/shogukaizenkasan_tutibun.pdf - 「福祉・介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(令和8年4月9日事務連絡・青森県掲載版)
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/syofuku/files/shogukaizen_QandA.pdf - 改正告示:こども家庭庁・厚生労働省告示第5号(計画相談支援関係・PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/001684450.pdf - 改正告示:厚生労働省告示第130号(地域相談支援関係・PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/001684361.pdf - 第50回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料1「障害福祉人材確保に向けた処遇改善等の課題」(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001609050.pdf - 自治体案内の例:千葉県
https://www.pref.chiba.lg.jp/shoji/jigyoushamuke/shienhou/syogukaizen/syoguukaizen.html - こども家庭庁「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について」
https://www.cfa.go.jp/policies/shougaijishien/shisaku/r8hoshukaitei - 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00013.html
この記事は制度の一般的な解説であり、個別の税務・労務・報酬請求に関する助言ではありません。具体的な判断は一次情報および指定権者・専門家にご確認ください。
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