制度の行間 #04

相談支援にも処遇改善加算が新設。届出先を間違えないために

連載「制度の行間」第4回
この記事は、こども家庭庁・厚生労働省が公表した一次資料をもとに、計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援の事業所の経営者・管理者・相談支援専門員向けに、令和8年6月施行の処遇改善加算の新設を整理したものです。制度の一般的な解説であり、公式見解そのものや個別の算定アドバイスではありません。具体的な算定・届出は必ず後掲の一次資料と指定権者(自治体)の案内をご確認ください。

第1回で「変更点③:相談支援への処遇改善加算の新設」に触れました。今回はその深掘りです。

長いあいだ処遇改善加算の対象外だった計画相談支援・障害児相談支援・地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)に、令和8年6月から処遇改善加算が新設されました。そして、この加算でいちばん間違えやすいのは要件でも計算でもなく、届出先です。

なぜ相談支援は、ずっと対象外だったのか

処遇改善加算の対象は、制度上「福祉・介護職員」——ホームヘルパーや生活支援員といった、直接処遇の職種を想定した設計でした。相談支援専門員は対象サービスの一覧にそもそも入っていなかったのです。

一方で、報酬改定検討チームの資料は、相談支援専門員などの専門職の平均給与も全産業平均との差があり、人材不足の一因になっていると指摘しています。そこで「現場で働く幅広い職種の賃上げ」という政府方針を受け、令和9年度の定期改定を待たずに、期中改定での対象化に踏み切った——というのが経緯です(令和8年5月分までは、補正予算による緊急支援事業が先行してつなぎ役を務めていました)。

新設された加算の中身

一次資料で確認できるポイントは次のとおりです。

要件は「2つの入口」のどちらかで

算定要件は、次のいずれかを満たすことです。

  1. 令和8年度の特例要件:職場環境等要件のうち「生産性向上のための業務改善の取組」を5つ以上実施する(課題の見える化、業務支援ソフト等の導入の2つは必須)。または、社会福祉連携推進法人に所属していること
  2. 処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件:キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備)+キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)+職場環境等要件のすべてを満たすこと

そして令和8年度は「誓約」の配慮措置があります。計画書の提出時点で要件が整っていなくても、令和9年3月末までに対応することを誓約すれば、満たしているものとして扱われます。ただし誓約した取り組みは年度内に実施し、実績報告書で報告する必要があります。「誓約して算定を始めた事業所」は、年度後半にこの宿題が残っていることを忘れないでください。

最大の落とし穴——届出先は「いつもの県」ではないかもしれない

ここが本題です。

処遇改善計画書や体制の届出は、指定権者(その事業の指定を行った自治体)に提出します。そして相談支援は、サービスによって指定権者が違います。

通常の障害福祉サービス(就労支援や生活介護など)の処遇改善計画書は都道府県や政令市・中核市に出すため、「処遇改善の書類はいつもの県の窓口へ」という感覚が染みついている法人ほど危ない。実際、千葉県は案内ページで「計画相談支援及び障害児相談支援は、指定権者である各市町村が計画書の提出先となります。県の受付フォームからは提出できません」とわざわざ明記しています。

複数サービスを運営する法人は計画書を一括で作成できますが、その場合も提出はサービスごとの指定権者へそれぞれ行います。「県に出したから終わり」にすると、市町村分が未提出のまま——という手戻りが起きます。

期限は過ぎている。でも、あきらめる話ではない

令和8年6月分から算定する場合の計画書の提出期限は、相談支援の加算新設事業所のみの法人については令和8年6月15日とされていました(既存サービスと同時に算定する法人は原則令和8年4月15日)。この記事の公開時点で、どちらも過ぎています。

ただし、これは「もう取れない」という意味ではありません。原則ルールでは、年度途中でも「初めて算定する月の前々月の末日まで」に計画書を提出すれば、そこから算定を始められます。6月に間に合わなかった事業所も、今から準備して途中の月から算定を開始する道があります。期限・様式・提出方法は自治体ごとに運用差があるので、まずは指定権者の窓口に確認してください。

いま確認しておきたいこと

  1. 自所の各サービスの指定権者はどこか(計画相談・障害児相談=市町村、地域相談支援=都道府県等)。提出先をサービスごとに書き出す
  2. 計画書・体制届の提出状況。未提出なら、途中月からの算定開始について指定権者に確認
  3. 「誓約」で算定を始めた場合の宿題(令和9年3月末までの対応と実績報告)を年間スケジュールに入れる

5.1%は、相談支援の報酬規模でも決して小さくありません。せっかく対象になった加算です。届出先の確認という地味な一歩から、確実に取りにいきましょう。

一次情報・出典

正確な要件・加算率・期限は、必ず以下の一次資料と指定権者(自治体)の案内をご確認ください。国の通知・Q&Aは執筆時点で国のページに未掲載のため、自治体(青森県)掲載の全文PDFを参照しています。Q&Aは「随時更新」とされているため、最新版もあわせてご確認ください。

【筆者について】「福祉参謀室」室長のりくです。ふだんは障害福祉サービス事業所の会計・経理・財務まわりの仕事をしている実務者です。税理士等の資格者ではないため、個別の税務・請求のご相談には応じられません。

この記事は制度の一般的な解説であり、個別の税務・労務・報酬請求に関する助言ではありません。具体的な判断は一次情報および指定権者・専門家にご確認ください。

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